聯合ニュース 2006/05/19 19:57
東アジア共通の声上げる時が来る、大江健三郎さん
【ソウル19日聯合】隣国とともに生きることを価値と考える東アジア地域住民共通のアイデンティティが、国益を追求するアイデンティティより強くなる未来が来ると信じている――。
ノーベル文学賞を受賞した日本の作家、大江健三郎さんが19日、文学評論家の金禹昌(キム・ウチャン)高麗大学名誉教授と「東アジアの平和ビジョンに向かって」をテーマにソウル市内で行われた公開座談会に出席した。大江さんは、東アジアの国々が互いに対立し反目しているが、いつかは共通の声を上げる時代が来るとの見方を示すとともに、東アジア市民のアイデンティティをともに作り上げていくべきだと述べた。その上で「自分の世代では不可能かもしれないが、長期的には可能だと信じている」と信念を見せた。

座談会に出席した大江健三郎さん(右)と金禹昌名誉教授=19日、ソウル(聯合)
韓日間で活発に行われている文化交流が韓日関係の対立解消にどのような役割を果たすかという問題については、韓流や韓国での日本の小説ブームなどからもわかるように、東アジアで文化の共通基盤が拡大していると指摘し、大衆文化の交流が東アジア的価値を結集するのに力になるとの見方を示した。一例として、村上春樹の小説が日本だけでなく韓国や中国の中年層にも同質的な情緒を伝えていることを挙げた。
こうした側面から、大江さんは小泉純一郎首相の靖国神社参拝に対しても、若者たちに靖国参拝が日本の文化を維持することだと教えていると辛辣(しんらつ)に批判した。また、大多数の日本人が靖国神社を戦争で死んでいった人たちの英霊が集まるところと考えているが、小泉首相はこれが日本の未来を開く道だと考えているとの考えを示した。
大江さんは独島をめぐる問題についても触れ、独島が領土として大きな意味があると考える日本人はほとんどいないと指摘するとともに、政治家が偏狭な民族主義を利用する手段として提起しているものだと述べた。特に日本政府がこうした民族主義をたきつけるマッチとして使っているが、これがダイナマイトにもなる状況が発生しかねないと懸念を示した。
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