朝鮮日報 2005/08/19 17:27
「昇進は恐怖の始まり…」 08年の「大量退職」実現か

午後9時、ソウル・鍾路(チョンノ)のA資格試験予備校では、広さが小学校の教室の3〜4倍位の大講堂で、80人余りが「不動産公法」の講義を受けていた。
大学生から白髪交じりの老紳士まで年齢層は広いが、ワイシャツ姿の40代の中年男性が圧倒的に多かった。
大手建設施工会社に勤務するカン・ソンフンさん(42)は、「最近のようなサオジョン(元々は西遊記に出てくる「沙悟浄」の韓国語読みだが、発音がサ=4、オ=5、ジョン=定年の定であることから、「45歳で定年」を意味する)時代に、何か、備えなければならないような気がして、3月から勉強している」と話した。
広津(クァンジン)区の会社から予備校まで地下鉄で40分かかるため、他の同僚よりも30分程早く退社する、とカンさんは話した。
定員100人余りの仲介士対策夜間クラス2講座を開設している同予備校関係者は、「仲介士夜間クラスの受講生の90%程度が会社勤めをしている人たち」とし、「3,4年程前までは50,60代以上の定年退職者が多かったが、最近は40,50代のサラリーマンがほとんど」と話した。
朝興(チョフン)銀行・麻浦(マポ)支店のチョン・ジェクォン副支店長(45)は入社27年の今年、部長に昇進した。しかし、昇進の喜びより、リストラの恐怖のために、チョンさんもまた今年から“2か条”を必ず守ろうと心に決めた。一つは公認仲介士の資格を取得することで、もう一つは「ボーナス全額を個人年金払込むこと」による老後資金づくりだ。
チョンさんは「他の人のように予備校に通いたいが、通常、夜10時頃に退社するため、独学するしかない」とし、「老後対策として、2月に1回出るボーナスを一銭も使わずに貯蓄している」と話した。
なぜ、リストラを心配するのかという問いに、チョンさんは、「大部分の市中銀行の雇用構造が、中間管理職が多い菱形だからだ」と話した。
実際、IMF(国際通貨基金)外貨危機以降、恒常化している構造調整は、サラリーマンたちを常に追い詰めている。
海運会社に勤めるイ・ヒョンソン(49)理事は、「大企業で13年間働いたが、部長に昇進した年に外貨危機になり、転職した」とし、「前の職場の同期のうち、役員になる見込みのない90%程度の社員は辞表を出したり、最後まで粘って子会社の衣類ブランドの代理店を任されたりして、皆、会社を去った」と話した。
しかし、今後数年後には、リストラが行われなくても、人口構成のためにやむを得ず会社を辞めなければならないという予測が出され、40,50代の不安心理を煽っている。
韓国社会の中枢をなす“ベビーブーム(Baby Boom)世代”危機論だ。ベビーブーム世代とは、通常、42歳(1963年生まれ)から50歳(1955年生まれ)にわたる世代を指す。あわせて810万人で、全体の人口4800万人の16.8%を占める。
民間の研究所は、ベビーブームの退職大乱が、1955年生まれを基準に3年後の2008年には本格化すると予想している。
ベビーブーム世代とは、通常42歳(1963年生まれ)から50歳(1955年生まれ)までを指す。
この世代の人口はあわせて810万人、全人口4800万人の16.8%に当たる。各民間研究所は、この世代のの退職による混乱が、1955年生まれを基準に、3年後の08年から本格化するだろうという見通しを先を争って出している。
これは、各企業が社内規定などで定めている平均定年の年齢は57歳だが、実際の平均退職年齢が53歳(統計庁)という資料を根拠にしている。 .
大学時代の70、80年代にはし烈な民主化運動の主役を担い、社会的に基盤を整えた30代後半から40代前半にアジア金融危機に直撃されたベビーブーム世代が、また「老後生存」という新たな試練を迎えることになる。
本紙の取材結果、この世代はかなり大きな精神的苦痛を訴えていた。
ソウル明(ミョン)洞の貿易会社で19年間働いているカン・ホソン(44)部長は、「大手企業とは異なり、給料が少ないため、国民年金以外には、さしたる老後対策をしていない」とし、「退職後、国民年金を受ける65歳までの10年から15年をどのように過ごせばいいのか目の前が真っ暗」と述べた。
カンさんが、高校1年生と中学2年生の2人の息子に使う金額は、月100万ウォンほど。カンさんは、「定年退職後、今より狭いマンションに引越しし、子どもには自ら生計を立てられる基盤だけを設けるつもり」とし、「妻が心配しないよう、家では老後対策に関しては一言も言わなかった」と述べた。
公企業の職員の未来に対する不安も同様だ。労働部傘下工業団地のキム某(44)部長は、「公共機関は定年が補償されるといわれるが、本人が我慢できず退職するケースが増えている」とし、「中学校教師の妻の月給まで含めて、一か月に50万ウォンの終身保険金を納めているものの、満期に受け取る1億ウォンでは生活費にも困る」と述べた。
ベビーブーム世代の大規模退職は、社会的に大きなコスト負担を意味する。代表的な例が国民年金だ。
今年、現在65歳以上の老人1人を扶養する生産可能人口(15歳から64歳)は7.9人だが、ベビーブーム世代が退職する頃の生産可能人口は5人、2030年には2.7人の水準まで低下する見通しだ。稼ぎ手はなくなり、使い手は増えるという意味だ。「国民年金は2047年に底をつく」という予測はこれに起因する。
最近、「日本の団塊の世代退職の影響と政策対応」と題した報告書をまとめた韓国銀行の調査局チョン・フシク副局長は、「07年からベビーブーム世代の退職が始まる日本では企業が自発的に65歳定年制を行い、就職紹介などに乗り出している」とし、「韓国でも退職のショックに備えて、高齢者に見合った職業の開発、賃金ピーク制導入による定年の保障など、さまざまな対策を設けなければならない」と述べた。
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